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Gramophone

だぁ!だぁ!だぁ!について、こっそりと。

ボツ小説を。

こんにちは。
なんていう時間じゃないですね。
おはようございます。

一週間前に携帯を壊してしまいました。
バックアップをとりそびれていた中に去年のクリスマスメモがあったんです。
もう漫画にするには腐りすぎていたネタなので、小説にしていたんです。
メモを失ったので完結できそうにないし、pixivにアップするには…といった品のでこちらに。
読みにくい文体ですが、よければどうぞ。

___________________

Title:日常

じゃじゃーん!これ見てくれよ~!と、突然視界が覆われた。
教室の自分の席に着くや否や三太が突然話しかけてくる事はいつもの事だ。
挨拶もなしにぶつかりそうな勢いで携帯を突き付けてきた辺り、今回はよっぽど話したかったのだろう。
こいつは俺以外に友達がいないのだろうか?というかお前、携帯あるのに文通してるのか?そんな高く掲げていると、教師に見つかってまた没収されてしまうぞ?
浮かんだ疑問はさし置いて、はよ、といった後に「朝から携帯がなんだ?」と聞くと三太は話し出す。

「おう、おはよう!これこれこれこれ!!!!ここを見てくれよ!!!!」
「普通の折りたたみ式携帯の待ち受け画面にしか見えないんだが」
「そうじゃなくて!!!!左下にいるだろう!ピキピキエンジェル!!!」
「あ、ああ、この動いてる奴な」
「しゃべってコンシェルのピキピキエンジェルだぜ~!!!いやーこれを作るのに俺は何日かけた事か!」
「お前、またそんなの作ってたのかよ」
「いーじゃん!発明は男のロマンなんだぜ~」
「はいはい」
「ココ!ココっ!ここを押すとな、ピキピキマークが増えるんだぜ!すげぇだろっ!!」

なにやら渾身の一作らしい。通常のしゃべってコンシェルの構造を調べる事からはじまり、GIFを作ったり、プログラミングをあたったり、幾つもの困難があったのだとか雄弁に語る。機械の事は嫌いじゃないが、興味がないので適当な相槌になってしまうのは仕方ないだろう。あぁ、家に帰ればルゥたち宇宙人がいるというのに、平和だ。気が抜けていく。
簡易通信機にもインストールして作ったんだぜ~ほらこれ!と、腕が伸びるような勢いで再び顔面に何か突き付けられた。
片手に収まるアンテナ付きのもの。ビジュアルとしては懐かしい、たまごっちを彷彿させる。四角い画面の中にはたまごっちではなく、白黒のドット絵のピキピキエンジェルがいた。下にはいくつかのボタンがある。目の前のものをようやく把握したが、間近すぎると、逆に何か把握しにくいと、言った方がいいのだろうか。
一度だけ瞬きをして「へぇ~」とだけ言えば、携帯を学ランのポケットにしまいながら三太は再び語りだす。あぁ、呑気な朝だ。

「わっ、黒須くんすご~い!」
「まーた何か変なもの作ったの?」

小西と天地がこちらに寄って来る。英語を教えてくれと集ってくる女子と違う二人に三太の相手を任せよう。
そうそう!見てくれよ~名付けて、ピキピキコンシェル!と俺に背を向けて三太が話し出したから。
すると、隣から高い声が落ちてきた。

「今日も賑やかだね、三太君」

いつの間にか隣に立つ未夢にそうだな、と視線と一緒に返す。
小西たちとこちらに来ていたらしい。
頬杖をつきながら目の前の話の展開に耳を傾けていると、天地がでもさぁ、と口を開いた。

「すごいのはわかったけど、このピキピキコンシェルのGPS恋人追跡機能、いらなくない?」
「う~ん、黒須君は使う相手がいないよね」

もっともな二人の意見に「それを言うなよ~」と沈み、拗ねる三太は最早よく見る光景だ。ただ、ずっとこんな風に落ち込まれてしまうのも面倒なので適当に、あかねちゃんがいるだろ、と励ましていると、小西たちの会話は未夢から俺に飛び火していた。

「西遠寺くんは?未夢ちゃんにいらない?」
「え?いらねーだろそんなもん」
「じゃぁ未夢は?」
「いやー、彷徨は家も一緒だから他の所にいってても別にいいっていうか…」

心の底から必要を感じていない未夢は、愛想笑いを浮かべながら頬をかいている。
小西と天地が一瞬言葉に詰まっている。そうだな、俺も言われたら言葉につまる。
素で、のろけているように聞こえるからだ。全くもって、そういうのでは無いのだけど。
チクリと背中に視線を感じたのも気のせいだろう。

「じゃぁさ、じゃぁさ、未夢!西遠寺君がアキラさんとデートしてても別にいい?」
「えっ…」

天地、その質問は卑怯だ。バレンタインでも相変わらず凄いですなぁ、で終わる未夢が言葉に詰まる質問だ。
ハハーンと分かったような顔をするな、と言いたいが口を出すような所でもない。むしろややこしくなると思っていると、今度は俺に質問が投げかけられた。

「西遠寺くんは?未夢ちゃんがみずきさんとデートしててもいい?」
「えっ」

小西と天地のコンビはこういう、鋭い所をついてくるのが要注意の二人だ。
突然の事態にろくな言葉が出なかった事は、悪くないと言いたい。


+++


制服のカーディガンと同じ色の枯葉。それがぴゅ~と吹いて、朝と同じように冷たい風が肌に刺さる。朝との違いはなんだろう。
西日が眩しいことと、疲れて気が少しだけ重い事だろうか。
朝の様に並んで西遠寺へ帰る彷徨とわたしの手には、もうひとつ、朝と違うものがある。

「そんなこんなで持たされたけど、いらないよねぇ」
「俺たちにはいらないなぁ」

片手に握ってるのは、三太くん作のピキピキコンシェル。朝、結局持たされたのだ。
「うちのクラスにはカップルいないんだしさぁ」「試しに使ってみなよ!」「人によってはプライバシーの侵害になるけど二人なら問題なさそうだし」そう話す綾ちゃんとななみちゃん。わたしと彷徨が言い返す前に水野先生が「HRはじめるわよ~」と来てしまった所で、この件は区切りがついてしまった。
昼休みにもう一度いらないと言っても綾ちゃんななみちゃんは珍しく引かないし、三太君に至っては結果を教えてくれよ!とらんらんに輝いた瞳で使い方を説明してて、話にならない。
彷徨と肩を並べて苦笑しつつ、最後に溜息をついた。
放課後にもう一度返そうとしたら綾ちゃん達には持っときなよ~と言われて、じゃぁ私たちはこれで!と先に帰られるし、三太君はまだ説明してない機能がどうたらこうたら、って言ってから、俺も帰ってやることがあるから!と去っていった。
それが、靴箱の前での出来事。あーあ、とその場に佇んでしまったのは言うまでもないと思う。
佇んだまま、ちらりと隣を見上げていい友達なんだけど、いい友達なんだけど、パワフルで疲れるよ~と目で訴えたら俺もだ、というを顔をした彷徨。もう一回、一緒に溜息を吐いた。
それからいらないよねぇ、と、とぼとぼ一緒に帰っているのだ。
これがわたしが綾ちゃん達と、彷徨が三太君と帰っていて、実際に使ってみようよ!となっているよりもいいのかもしれないとか、ルゥやワンニャーに持たせればどこにいるかわかっていいかもしれないとか、それはワンニャーの携帯型通信機で充分だとか、買い物してる時に使えるかもしれないとか、電話機能はないから追加は頼めないだとか、ぽつりぽつり、枯葉を踏む音のように話していると、西遠寺の石段が見えてきた。
今日もこの強敵、石段を登るのか…と思った所で、ピンク色も目に入る。
石段のすぐ横にある西遠寺の石の看板。
その後ろに隠れているのだろうけれど、ちょこっと覗くピンク色の髪。緑のスカートは制服っぽい。

「クリスちゃん?」
「きゃっ、未夢ちゃん!そ、それに西遠寺君も!」

屈んで声をかけると、看板に背を持たれて屈んでいたクリスちゃんが振り向いた。
ほんのすこし、頬を赤くしてこちらを見上げている。
すくっと立ったかと思うと、どうしたんだ?という彷徨の問いかけにえぇぇぇ、えぇと!と真っ赤になってしどろもどろになるクリスちゃん。

「そ、そうですの!わたくし、未夢ちゃんに話があって!」
「わたし?」
「未夢ちゃん!ちょっとよろしいかしら」
「うん、なぁに?」
「ええと、その…」

彷徨がいるからだろうか。とってもかわいい乙女なクリスちゃんの話を首を傾けて待ってると、俺、先に行って行ってるから、と彷徨が階段を登りはじめた。え、ちょっと!と大きな声を出すと、ゆっくりどうぞ~という声だけが返ってくる。
ああもう!クリスちゃん、本当は彷徨に会いに来てるのに先に行ったら意味ないじゃない!馬鹿!と叫びたいのをこらえて、どうしたの?とクリスちゃんに聞いてみた。

「その、わたくし未夢ちゃんにお願いがありまして」
「なぁに?」
「今日、黒須くんのピキピキコンシェルもらってらしたでしょう?それ、わたくしに貸して欲しくて…」
「あ、これ?あげるよ!」
「えっ、よろしいんですの?」

きょとんとしてから喜ぶクリスちゃんにうん、いいよいいよ~!わたしが持ってても役に立たないし、クリスちゃんの方が使いこなすだろうし!と渡しながら言うと、未夢ちゃん!ありがとうございますですわ!とクリスちゃんは目を輝かせた。
わたしの手を握ってぶんぶん振った後に、それでは失礼致しますわ~と上品に手を振って去っていく。

(あぁ、この握手のやり方はどこかで…)

ぼんやりクリスちゃんを見送っていると思い出す。
望くんだ。クリスちゃんと望君はどこか似てるなぁ、と思いながら階段を登りはじめる。
すっかり時間が経って、もう夕暮れ時。
絶景の夕日に間に合うように、ほんの少し駆けて石段を登った。